退職

朝、上司を呼び出して、退職の意思を伝えた。 どこから話していいのかわからなかったが、ありのままを話した。 「私はずっと文芸の世界に憧れてきて、 学生時代も出版社を中心に就職活動をしてきました。 大学4年生の9月、10月まで、 小さな出版社にも応…

歳月

先日、久しぶりに大学に行った。 かつて、狂ったようにネコの写真を撮り続けていた場所へ行くと、 木が切り取られ、ネコの小屋は整備され、 なんとなく無機質で、人もネコも寄せ付けないような風景になっていた。 かつて私がこの写真を撮ったこの風景は、 も…

労をねぎらう

気が付けばあっという間に2月。 「吉田さんも、もうすぐ1年ね。」 なんて言われることが増えた今日このごろ。 ぼんやりしていると時間ばかりがどんどんどんどん流れて行く。 どんどん私にも仕事が引き継がれ、 自分の身に降り掛かる出来事に、私はまだつい…

川上未映子さん

私は川上未映子さんの文章を素直に読むことができない。 嫉妬が邪魔をするのだ。 口語のようでありながら、そこはかとなくする文語体の匂い。 滝沢馬琴や泉鏡花を彷彿させる流れるような美しい文章。 独特の世界観はまさに私が目指すものに限りなく近い。 私…

仕事

久しぶりに真面目に文章を書いていた。 とある募集に応募するためだ。 「私の好きな人」という課題だったのだけど、 文字数は700〜800字と限られていて、とても苦労した。 さんざん悩んで、あれこれ下書きして、何度も練り直して、 それでも満足に仕上…

無題

写真を、もっと上手く撮れるようになりたいのだけど、 なかなか思うようにいかない。 いつか駒沢公園近くのバーで知り合った男性に 「技術や勉強なんて必要ないよ。 数、撮れ。数。 写真の善し悪しは撮った数に比例する。」 と、言われたことがある。 それを…

ばななと元旦

2010年のスローガンは「誘いは断らない」だったので、 2011年もスローガンをかかげることにした。 「実現する」。 それが、今年のスローガンです。 今年は私も25歳になるわけで、 なんだかもう すっかり実感がわかないのだけど、 でも、それは紛れ…

いま、まさに、この場所で

役者をやっている友人がいる。 彼女が所属する劇団が、低予算で実験的な公演をするということになり、 私の知り合いの映像研究をしている男性に、ビデオ撮影のオファーがかかった。 彼女と彼は、 私がいなくたってそのうち知り合っていたかもしれないけれど…

お酒

「この世からなくなってしまったら困るものって何?」 先日、人からこんなことを聞かれた。 随分おかしなことを聞くなと思ったけれど、 私は間髪入れずに、「お酒」と答えた。 その人は一瞬、驚いたような反応をした。 まさか24歳の女からそんな返事がくる…

「鳥よりも高く飛べ」

荒木経惟の写真集で『空事』という作品がある。 どういうふうに読むのだろう。 買った時から、思っていたことだった。 その写真集を見つけたのは、確かセンター試験の直前の頃だった。 19歳の冬、渋谷のツタヤで偶然、見つけた。 出版されてから1年も経っ…

前髪を切る

クリスマスを目前にして、 天皇誕生日の祭日の前日の今日、前髪を切りに行った。 それも、仕事中に。 なぜなら、どこのお店も忙しくてとてもアポイントなんてとれないからだ。 「今週一週間はどこにもアポ入れない」 と言い切った人もいた。 午前中に秋葉原…

同業他社の人

新宿方面にあるそのお店は、 トラットリアでもなければリストランテでもなく、 カジュアルなレストランなのかと言えば少し違う気もするが、 強いて言うならカジュアルなお店なのだと思う。 安くもなければ高くもない、中程度の、きちんとしたワインを揃えて…

クレーム

商品に関してちょっと大きなクレームがあった。 私が担当している問屋さんから報告を受けた。 とあるレストランでクレームが発生した、と。 私は一度も行ったことがないお店だったが、 自分が担当している問屋さんの先でクレームが起きたということで、 私が…

忘年会の帰り道

忘年会の帰り道、ふと空を見上げたら、満天の星空が広がっていた。 空気が澄んで、普段なかなか見えない星まできれいに見えた。 祖父がまだ生きていた頃のことをふと思い出した。 私が今住んでいる家は、 当時祖父母が住んでいた団地から徒歩5分くらいの場…

10個で200円

4時過ぎ頃、浅草寺の仲見世を歩いていたら、 人形焼きのタイムセールをやっていた。 焼きたての人形焼きが10個で200円になっていた。 普段人形焼きはそんなに好きではないのに、 なぜか無性に食べたくなってしまって、10個買った。 私の手の平に収ま…

死のうと思っていた。ことしの正月、よそから着物を一反もらった。 お年玉としてである。着物の布地は麻であった。 鼠色のこまかい縞目が織りこめられていた。これは夏に着る着物であろう。 夏まで生きていようと思った。 (太宰治『葉』) 仕事を辞めてしま…

ばら

朝起きて、久しぶりにバラを眺めた。 何か様子がおかしいなと思ってよくよく眺めていたら、 至る所に虫がついていた。 あぁだから葉っぱがこんなに貧そうになって、 全体的に元気がなくなっていたんだな、と思った。 枝の枯れてしまった部分や、 虫のくっつ…

パブリックシアターと、サイモン・マクバーニー

世田谷パブリックシアターに「春琴」を観に行った。 サイモン・マクバーニーという演出家が、 谷崎潤一郎の『陰翳礼賛』に描かれる美の世界をモチーフにしながら 『春琴抄』をオリジナル化した舞台で、 それはもう美しかった。 日本古来の、マイナスの美が舞…

中学の同級生

渋谷で、中学の同級生を見かけた。 彼女は高校を途中でやめてしまったから、 かれこれ7年くらい会っていないことになる。 ちょっとシュールで、頭が良くて、 どことなく色っぽくて、 私はなんとなく彼女が好きだった。 決して主張の強いタイプではなく、 多…

やさしい味

心に染み入るような美味しい物を食べたとき、 美味しいからどんどん食べたいと思う反面、 なくなってしまうと寂しくなるからゆっくり食べようと思ったりもして、 複雑な気持ちになる。 でもその瞬間、私はとても幸福で、満たされている。 美味しければなんで…

私の不足の致す所です

考えてみれば当たり前のことなのだけど気付いていなかった。 この仕事を始めてから、そういうミスを沢山している。 今までは 「申し訳ありませんでした!」 で済んでいたけれど、 今回はお客様が大変お怒りで、 「もう来なくていい」 と言っていると、人づて…

駒沢大学駅での出来事

月末の最終日は売上げが出るまで帰れない。 会社を出るのが、大体10時から11時の間くらいだ。 それよりも遅いこともあった。 そういうわけで、11時半くらいに電車に乗っていたら、 駒沢大学駅から、 アルバイトをしていたお店の常連さんが乗ってきた。…

呑み助の星

とんでもなく酔っぱらって帰った帰り道、 道ばたで携帯電話を落っことして、 電池パックのカバーがどこかに消えてしまった。 真っ暗だし、酔っぱらっているし、 辺りは落ち葉だらけで、とても見つかりそうになかった。 落ち葉をかき分けながら、 しゃがんで…

日吉のレストラン

日吉に大好きなレストランがある。 入社2日目のランチで先輩につれていってもらったお店で、 その日に食べたホタルイカのパスタの感動は今でも忘れない。 目を閉じれば海岸の風景が瞼に浮かんでくるような新鮮な磯の香りがした。 お店の雰囲気も温かくて、 …

芝居

久しぶりにお芝居を観た。 森山未來や片桐はいり出演の「タンゴ」というお芝居だ。 芝居を見に行くという行為が好きだ。 よく「芝居は生もの」なんて言うけれど、 今まさに自分の目の前で作品が作られているという臨場感が、いい。 それと、 私は自分が好き…

千葉へ営業

千葉県のレストランへ営業に行った。 今日初めての訪問だ。 住宅街の中にあって立派なワインの倉庫を持っているが、 とにかく遠いと先輩から聞いていた。 景気の良かった時代には、先輩が訪問したとき、 「遠くまでわざわざ来てくれてありがとう。」 と10…

森のくまさん

童謡「森のくまさん」の歌詞は、不思議だ。 少女が森の中でくまと出会う。 少女はくまから「お逃げなさい」と言われ、駆け足で森を出ようとする。 ところが くまが、少女が落とした貝殻のイヤリングを持って追掛けてきて、 少女はお礼に歌をうたう。 なぜ、…

時間の無駄

何か私、この会社で時間を無駄にしてるな。 昨日の朝から、ずっとそう思っていた。 それはきっと、先週の土曜と日曜の休日が充実しすぎたせいだ。 私には、自分の好きな自分の状態、というのがあって、 長らくそれを忘れていたのだけど、 この間は久しぶりに…

不思議な生き物

オペラシティの近くにあるレストランを担当している。 そこの店長はどういうわけか私の会社のことをよく知っていて、 私なんかでは気軽に話せないようなベテラン社員とも仲がいいらしい。 先輩とともに引き継ぎ挨拶で訪問した時から、 「君はどうしてこんな…

珈琲をいれる時間

朝起きて、作っておいたトマトソースをパンに塗って、 ピザトーストを食べた。 会社でマルコからもらったトマト缶と、 お客様にサンプルで配る用のオリーブオイルを使って作った、 トマトソース。 それと、お客様に配った後にあまってしまって持って帰ってき…