歳月


  先日、久しぶりに大学に行った。
かつて、狂ったようにネコの写真を撮り続けていた場所へ行くと、
木が切り取られ、ネコの小屋は整備され、
なんとなく無機質で、人もネコも寄せ付けないような風景になっていた。
かつて私がこの写真を撮ったこの風景は、
もう、この世のどこにもないのだ。
そう思ったら、なんだかとても、寂しかった。


  いつも座っていたベンチにも座った。
そこは何も変わっていなかったけれど、
そこはもうすでに他人の場所で、
私はそこでくつろぐことはできるけれど、
くつろいだ後は、大学とは別の自分の日常に帰って行く。
もう大学での時間は自分の日常ではなくなったのだと実感した。
当たり前のことだけど、寂しかった。


  当時から自覚していたが、
私は、大学生である時間を愛していた。
こんなにも自由で愛おしい時間はないと当時から思っていた。
気ままに図書館で本を読むこと、
ベンチでぼんやり音楽を聴くこと、
授業だって、全てではないが好きだった。
写真も良く撮った。
春の風景、秋の紅葉。


  大学時代、友達はほとんどいなくて、
今でも連絡を取り続けているのはたったの1人。
同じゼミにいた割と仲の良かった友達は皆、地方の実家に戻っていった。
いつも1人だったのに、私はなぜ、あんなに日々に満足していたのだろう。