お酒

「この世からなくなってしまったら困るものって何?」
先日、人からこんなことを聞かれた。
随分おかしなことを聞くなと思ったけれど、
私は間髪入れずに、「お酒」と答えた。
その人は一瞬、驚いたような反応をした。
まさか24歳の女からそんな返事がくるとは、
思ってもいなかったのだろう。


  なんでそんなにお酒が好きなんですか、と聞かれたとしても、
答えに困ってしまうだろう。
好きなのだから、仕方がない。
好きであることに、理由なんてない。


  最近ぼんやりと、体ごとお酒に浸りたいと思うことがある。
飲む量は、前に比べればめっきり減った。
疲れているせいか、前よりも酔うのが早くなった。
空腹で飲めば、一杯でもう充分酔っぱらってしまって、ぽわんとする。
前はこんなことはなかった。


  酒量が減ったけれど、最近、前よりもお酒を必要とする気持ちが強くなった。
なぜだろう。
一日に一回は必ず、お酒を飲みたいなと思う。
昼も、夜も関係なく。
あぁ私はきっと、アルコール中毒になる要素を沢山もっているんだろうなぁと、
ぼんやりと思う。
だから、なるべくお酒を飲まないようにしたほうがいいんじゃないかとも、
最近思うようになった。


  生活に楽しみがないのだと思う。
多分、楽しめるはずのものは私のすぐそばに沢山転がっているのだけど、
それらを一つ一つ取り上げて楽しむことが、今の私にはできていないのだ。


  お酒は、とても手軽に、簡単に、楽しむことができる。
時間も使わず、考えることもせずに、楽しめる。
もうそんなことを言っている時点で中毒の傾向があるような気がしてならないのだけど、
思ってしまうのだから仕方がない。
これが私の、もっとも素直で、もっとも率直な意見なのだ。

  
  そして、ぼんやりとお思う。
なんか、寂しいな、と。
お酒くらいしか楽しみがないなんて寂しいなと思う。
そして、
寂しいからお酒を飲んでいるんだろうなとも思う。