私は、好かれていたのだろうか

土曜日の今日、前に勤めていた会社の上司からメールがきた。 「どうしてるかなと思い、メールしました」と。 女性で、入社当初は私の所属のチームの主任として働いていて、 年明けとともに課長に昇進し、私の上司になった人だ。 金曜日、在職中に私が担当し…

私はこういうふうにしか生きられない

人生ってそんなご立派なものだろうかと考えていたのだけど、 エスクァイアを読んでいたら、内田樹さんがこんなことを言っていた。 教育の場にも消費社会のこの原理が侵入してきました。学習の動機付けとして、 努力の報酬を約束する「利益誘導」のロジックが…

吉田さん、これからどうするの?

今朝、校閲室の新聞を綴じていたら、 「吉田さん、これからどうするの?」 と、突然聞かれた。 ヒゲと黒ぶちメガネがトレードマークの男性で、 多分、部長かなにか、そこそこの役職の人だろうと思われる。 名前も知っているし、よく話はするが、 私は彼の役…

手紙

ジャッキーから電話がかかってきた後、手紙を書いた。 「落ち込んだらまた電話するよ」 なんてことを言われて、私は胸が締め付けられるような気持ちになって、 それからずっと彼女のことを考えていた。 心配だったのもあるし、 こんなふうに自分を必要として…

珈琲を飲みに

御徒町のイベントでその人が一日中 珈琲を淹れると聞き、 仕事後、珈琲を飲みに行った。 そのイベントのメインは珈琲ではなくその人が撮った写真の展示だったのだけど、 私には、その人が淹れた珈琲を飲むことの方が重要だった。 行けば誰か知り合いに会うだ…

探し物は見つかりましたか

大学四年生の時、ある出版社が主催する、表現とは何かを考える講座に出ていた。 半年間の講義が終わるとき、講師をしていたその人からハガキをもらった。 手紙は全部で三行か四行かの文章で、 その一行目には、こう書かれていた。 「探し物は見つかりました…

女としてのセンス

『婦人公論』の最新号に載っている、山田詠美と安部譲二の対談を読んだ。 仕事中に自分の机で読んでいたのだが、 「何の記事ですか?」 と、おじいさん(記者)に話しかけられた。 「山田詠美さんと安部譲二さんの対談です。」 「ほう。山田詠美さんと、安部…

トマトジュース

落語に行きませんか、と岸野さんにメールを送ったら、 2日後に 「あやの元気ですか?」 と、返事がきた。 その日は仕事なので行かれないとのことだったが、 それよりも何よりも、メールの一番最初に 「あやの元気ですか?」 と書かれてあったものだから、何…

下町のナポレオン

つかっちゃんと思う存分お酒を呑み、 そのまま家に泊めてもらった翌朝、 7時頃に目が覚めた途端に、どうしても家に帰りたくなった。 つかっちゃんはまだ眠っていた。 前の晩に使った食器を片付け、布団をたたみ、少しだけ髪と顔を整えて、 部屋を出ようとし…

メモ

文章を書いていると、 ふっ、とある言葉や文章が浮かんでくることがある。 そういう風に浮かんでくる言葉や文章は、 大概、まだ気付いていなかった自分の本心を自覚させるもので、 自分にとって目からウロコが落ちるくらい大切で貴重なものであることが多い…

ガラ刷り

「これは、内折って言うんだよ。 週刊誌は、内側からできていくのね。 それで、これが、5折で、これが、4折。 5折と4折をこう重ねると、 ほら、このページとこのページがつながって、 読めるようになるでしょ。 雑誌は、こうやってできていくんだよ。」 …

すあまと、神田川

毎年この時期になると思い出す。 大学に入学した年、当時とても好きだった人と桜が満開の神田川沿いを歩いた。 桜の下を歩くのが、とても絵になるような人だった。 少し色気のある、美しい人だった。 ふと通りがかった和菓子屋のショーケースにすあまが並ん…

中性的な存在

昔、思い切り髪の毛を短くしたことがあった。 髪の毛を、すごく短くしてください。 男の子かと思うくらい、短くしてください。 全部終わってすっきりしたんです。 すっきり、さっぱり、思い切り短くしてください。 私がそう言うと、高田さんは、肩より長かっ…

鳥南蛮

土・日になると、お昼ご飯に誘ってくれる記者の人がいる。 年齢は知らないが、きっと定年もそう遠くはない。 会社の周りの美味しいお店やこじゃれたお店に詳しく、 その日の気分に合わせてカレーや、定食、ピザなどを食べにいく。 今日は何がいい、と聞かれ…

思い出

今の職場の近くには、昔好きだった人が働いているお店がある。 彼はそこで珈琲豆を焙煎していて、 知り合ったのも、私がそこに珈琲豆を買いに行ったことがきっかけだった。 風の吹く日は、お店の前を通ると、珈琲を焙煎しているいい香りがした。 しかし、3…

都会のナイスな商社

「仕事、辛くない? 大丈夫?」 朝、編集長が声をかけてくださった。 午前中、まだ記者の人たちが出社していないような時間帯に、 たまに編集長が話しかけてくれる。 「大丈夫です。 ありがとうございます。」 「吉田さんが来てくれたときからさ、本当にいい…

松山へ

一年前の今日、私は、松山に行った。 前の晩に急に思い立って、朝になるのを待ち、 朝になると同時に仕度をして新幹線に乗った。 前の晩は、アルバイト先の人たちが送別会をしてくれた。 岸野さんがフェデリコ・フェリーニの『道』のDVDをくれて、 送別会か…

ただ、その一言で

最近、多田玲子さんという人のイラストが好きだ。 きっと ふくちゃんもこの人の絵を好きになってくれるのではないかと思い、 深夜であるにも関わらず、 多田玲子さんのイラストを、メールで送った。 次の日になってもなかなか返事がこなくて、 いつものふく…

親子

大地震から三日目。 仕事中、母から電話がかかってきた。 今晩みんなでごはんを食べることにしたが、帰宅は何時になるのかと。 八時か、九時くらいになるだろう、と答えた。 我が家は最近ではみんなばらばらに食事をとっている。 それぞれ帰宅時間が全く違う…

大震災

地震が起きた時、会社にいた。 「あぁ、揺れてるねぇ。」 なんて最初のうちは周りの人が呑気に言っていて、 「あれ、長くない?」 などと言いながら皆が周りをきょろきょろし始めているうちに、 揺れが段々大きくなって、高い所の資料などがばたばたと地面に…

元会社員

あるデータをもとにエクセルで資料を作るように言われた。 比較できるよう一覧表にするのに加えて、 さらに、データを比べて勝っている方には網をかけてほしいとのことだった。 文字を打ち込み、指定した位置に印刷する程度には、 前の会社でエクセルをいじ…

昔住んでいた家の庭には、私の背丈くらいの梅の木があった。 もとは小さな盆栽で、 父が大切に育てていくうちに大きくなり、庭に移し替えたのだとか。 いつもこのくらいの時期には薄桃色の可愛らしい花を咲かせ、 庭をいい香りで満たした。 たまにウグイスも…

入れ歯

ガールスカウト活動をしている知人たちとご飯を食べた。 私を含めて四人で集まったが、 社会人になって以来すっかり足が遠くなってしまった私を除いて、 後の三人は今でも熱心に活動をしている。 ガールスカウトの主な活動日は土曜日、もしくは日曜日。 仕事…

その後のこと

前の会社に、1人だけ同い年の女性がいた。 彼女は私より社歴が1年長かったので社内では敬語を使って話していたが、 会社の外では友達として話すことが多かった。 私の退職をたいへん寂しがってくれて、 退職してまだ一週間ほどなのに何度もメールや電話を…

電話対応とカレー

今日、新しい職場に来て初めて電話をとった。 私がとる電話のほとんどは、読者からのもので、 感想から情報提供から記事への批判までそれはまぁ様々な電話がかかってくる。 記事の批判をしていたかと思いきや、突然 私への説教が始まり 「電話の感じだとあな…

早稲田

電車の中で、大切そうに早稲田の受験票を握りしめた男の子を見かけた。 ふと気付いて社内を見回してみると、 皆、早稲田の赤本を持ったり、英単語帳を真剣に読み込んでいたり、 受験生ばかりで、 あぁそうか、今日は早稲田の試験日なのだと思った。 かつては…

前髪

前髪を短くした。 多部未華子さんと同じくらい、短い。 綾瀬はるかさんや多部未華子さんが前髪をパッツンにする前から 私は短くしたいと思っていたのだけど、 職業柄少しはばかられたのと、 あと部長からいつも 「吉田は眉毛が薄いよ。」 や、 「吉田は前髪…

ホワイトバレンタイン

会社を出る頃には雪が降り始めていて、 電車に乗っている頃には雪が大粒になり、地面には少しずつ雪が積もり始めていた。 今日はバレンタイン。 私にとっては出版社への初めての出勤日だった。 去年珈琲屋のアルバイトを辞めたのはホワイトデーのことで、 バ…

退職日

最終日は一日内勤をしていてください、と上司から言われた。 一日中内勤なんて、入社初日以来だ。 いつ辞めてもいいように机の中はきれいにしてあったので、 中から荷物を出すくらいで整理は済んだ。 よく、 生きている間に早めにお墓を買うと長生きするなん…

出張先からの電話

職場で、変態、変態、と呼ばれている男性社員がいた。 彼の変態エピソードは数えきれないほどあるとのことだったが、 例えば既婚の女性社員にエレベーターの中で抱きついたとか、 ベランダでタバコを吸っていた女性社員にやはり抱きついたとか、 セクハラ発…