2010-08-01から1ヶ月間の記事一覧

ポケットに司馬遼太郎

その人はまるでハーフのような顔立ちをしていながら、 生粋の日本人なのだと言う。 ヨーロッパ系の、きれいな顔立ちをしている。 出身は香川県だが、なぜか、関西弁のような話し方をする。 もしかすると、香川の話し方は関西弁に似ているのかもしれない。 口…

欲求

夕方、窓から見える外の景色が真っ赤になっていて、驚いて外に出た。 空にはうっすらとした雲が一面に広がり、 沈みかけた太陽の真っ赤な光がそこに映し出され、 まるで、水色の空に真っ赤な絹が棚引いているようだった。 夢中でシャッターを切った。 私は昔…

チェーンレストランでは、1.4ミリの特殊なパスタが使われるのだという。 普通のレストランで使うのは、1.6ミリや1.7ミリ。 家庭用も、その辺りが無難だ。 「吉田さん、何でチェーンレストランでは1.4ミリなんだと思う?」 会議で、課長に聞かれ…

お盆のあいだ仏壇に供えていた梨をむいた。 写真に写った、梨の皮の黒い斑点のようなものに気付いて、 あぁ気持ち悪いな、と思った。 細かい小さな点が斑点状に広がっている様を見るのが、昔から苦手だ。 鳥肌が立つような、背筋に悪寒が走るような、そんな…

寄り道

昨日の夜、窓を開けて寝た。 目を閉じて眠ろうとすると、虫の音が聞こえた。 昼間はまだまだ陽ざしが強くて気温も高いけれど、 着々と季節は秋に近づいているのだと思った。 前から食べたかったシェフの料理を食べに行った。 ワインを飲みたくなった。 イタ…

24歳、OL

毎朝交差点の横断歩道を渡るたび思う。 「これでいいのかな。」 と。 今の私は何か間違っているのではないかな、と。 そして、三木聡の『インスタント沼』という映画の主人公を思い出す。 役名は忘れてしまったが、麻生久美子が演じていた。 「ジリ貧OL」な…

人の温かみ

千代田線代々木公園駅で電車を降りた。 ちょっと歩けば小田急線代々木八幡駅に、 反対側にもう少し歩けば渋谷駅に出る、不思議な場所だ。 その三つのどの駅からも行くことができるレストランに行く前、 他のレストランに電話をした。 サンプルで持っていった…

何もしてない

中学一年生の時にこの家に越してきた頃、 我が家の隣はだだっ広い駐車場だった。 いつの間にかだだっ広い駐車場の土地は売却され、 今年の始めにはそこに8軒もの家が建った。 先週くらいに隣に建った家に人が引っ越してきて、 リビングの私の席の隣の窓から…

和風煮込みハンバーグ

ハンバーグは好きだけど、味の濃いデミグラスソースは好きじゃない。 こんがり焼いてすこし脂ぎったハンバーグは好きではなくて、 中から泉のように肉汁が湧き出てくるハンバーグが好きだ。 ということで、今日は初めて和風煮込みハンバーグを作ってみた。 …

会社員

いつ会社を辞めてもいいように、机の中はきれいにしてある。 ある朝目覚めて、突然そのまま会社に行かなくなってしまうかもしれない。 あるいは、 営業から戻ってそのまま課長に辞表を渡すかもしれない。 私の会社は、 「辞めさせてください。」 とお願いす…

夏休み3日目

ワインのラベルは、ぬるま湯に浸けておくときれいに剥がせるらしい。 ネットで調べ、早速今まで飲んだワインのボトルをぬるま湯に浸けることにしたが、 数が多かったので浴槽に浸けた。 我が家はいつも浴槽にある程度お湯がためてある。 地震が起きたときの…

サルスベリ

夏の花を撮りたいという知人に付き添い、サルスベリを撮りに行った。 サルスベリはどうも、夏を代表する花らしい。 サルスベリが夏に咲くことは知っていたが、 代表する、と言えるほど存在感のあるものだとは知らなかった。 考えてみれば、日本国内のそこら…

中学時代の友達

中学時代の友人が町田でお酒を呑んでいると言うので、 仕事帰りに町田へ行った。 新宿で大江戸線から小田急線に乗り換える。 会社から町田まで一時間半近くかかった。 夏休みに入る前の日だったから安心して遠くまでお酒を呑みに行けたのと、 こうでもしない…

浅草

営業で浅草へ行った。 夕方近くで、陽も沈みかけ、風が涼しくなり始めていた。 情緒ある小料理屋は夜の営業に向けてそわそわ動き始めていて、 買い出しや休憩から戻った主人が店の引き戸を開ける姿をちらほら見かけた。 大通りから一本入ったアスファルトの…

初めての接待

このブログは、 いつ終わってしまうかわからない会社員としての私の日常を 書き記すことを目的としている。 そんなことを言いながら死ぬまで会社員かもしれないし、 案外 来年あたりに専業主婦になっているかもしれないし、 もしくはある日突然会社を辞めて…

ピアノグリロ

何週間か前、とあるレストランでオリーブオイルの話をした。 その時にシェフが 「イタリアにいた時に働いてたレストランで使ってた、 黄色い缶に小人の絵が描いてあるオリーブオイルが美味しかったんですよ。」 と、言った。 卓上用の小さな缶で、見た目も可…

桃のパスタ

今日のお昼に桃のパスタを食べに行くけど一緒にどう? と隣の席の先輩から誘われ、便乗した。 ニンニクで味つけした冷製パスタに、 フレッシュで甘みの強いトマトがあえてある。 薄くスライスした生の桃が何切れかその上にのっていて、 最後にミントが添えら…

オリーブオイルのテイスティング

トマト2缶と食材を数点持って有楽町のレストランへ行った。 こんなに持ってきてシェフが不在だったら嫌なのでアポはとってあって、 14時半に約束してあった。 有楽町のビル街の中、 少し早く着いてしまったので立ち止まってぼんやりしていたら、 偶然外を…

性に合う

一人で営業に出るようになって、時折、私は岸野さんの言葉を思い出す。 「七階のにぎやかな感じもいいですが、 一人ひとり丁寧に接するのが彩乃と性に合っていたんじゃないかと 勝手に思っています。」 アルバイト最後の日、こんなメールが来たのだ。 地下一…

山積みの仕事

朝から会議。 そんなこと24人も集めて話す必要ないだろう、ということを、 1時間もかけて部長が話す。 要点だけまとめれば、20分くらいで済みそうな内容だ。 それをくどくどと1時間も話す。 つまり内容は、 先月の部署の売上げを全員で確認して、各課…

主任

私の所属する課には課長がいて、その次に主任がいて、 後は7人の社員の、合計9人で構成されている。 主任は35歳の女性で、勤続7年のベテランで、結婚もしている。 私は主任と家が近く、週に1回は一緒に帰る。 主任の気さくで親しみやすいお人柄と、 あ…

図書室の子

小学校3年生の頃、朝と昼休みと放課後のほとんどを図書室で過ごしていた。 本が好きだったのだろうかと言えば、そうでもない。 本を読むくらいしか、することがなかったのだ。 あの頃私は人と話すのが苦手で、友達がいなかった。 誰かといると何かを話さな…