手紙

  ジャッキーから電話がかかってきた後、手紙を書いた。
「落ち込んだらまた電話するよ」
なんてことを言われて、私は胸が締め付けられるような気持ちになって、
それからずっと彼女のことを考えていた。
心配だったのもあるし、
こんなふうに自分を必要としてもらえたことが嬉しかったからでもあるし、
どんなことでもいいから、彼女に何かを伝えたかったのだ。


  電話だとうまい言葉が見つからず、
何も気の利いたことを言えない自分が嫌になるのに、
紙に向かうとすらすらと言葉が出てくる。
伝えたい思いがどんどん、どんどん溢れてきて、
文字を書くスピードが感情の生まれるスピードに追いつかないほどだ。
恥ずかしくて言えなかったことも、手紙になら書ける。
どうして私はこうなのだろうと思った。
一番大切なことは、
ジャッキーのように近しい存在にさえ、
恥ずかしくて声に出して伝えることができない。
恥ずかしいのだ。
恥ずかしくて恥ずかしくて、とても口にすることができないのだ。
「私は、友達だから舞台の上のあなたに魅力を感じているのではなくて、
 舞台の上のあなたに魅力を感じているから、
 これからもずっと友達でいてほしくて、
 公演を見に行ったり、手紙を書いたりする」
と、もうずっと前から思っていることなのに、
どうしても、声に出すことができない。


  私は、文字を介してしか自分の気持ちを人に伝えることができない。