ただ、その一言で

  最近、多田玲子さんという人のイラストが好きだ。
きっと
ふくちゃんもこの人の絵を好きになってくれるのではないかと思い、
深夜であるにも関わらず、
多田玲子さんのイラストを、メールで送った。


  次の日になってもなかなか返事がこなくて、
いつものふくちゃんなら一言くらいの短い返事を送ってくるはずなのに、
なんだか、おかしいなぁと思っていた。


  夜になって、どうもいつもの  ふくちゃんとは似ても似つかない、
男性のような文面で返事が返ってきた。
アドレスが全部とんでしまったので、わかりません、どなたですか、
というようなことも書かれていた。
特に深い意味はなかったのだけど、
昨日に限って電話帳からではなく手で打ってアドレスを入力していたために
違う人に届いてしまったのだということが、
その時に判明した。
手で入力したことには、本当に、深い意味はなかった。
何となくとった行動が、こんなことを引き起こすなんて思ってもいなかったので、
少し驚いた。


  すみません、間違えました。
他の友人に送ったつもりでいましたが、
アドレスを誤っていたようです。
知り合いではないと思います。


  そんなような返信をしたら、
「ほっこりする絵でした。
 また、間違えてください。」
なんて返事がきた。


  「ほっこり」という言葉を彼が使ったことで、
妙に私は興奮してしまった。
私も良く「ほっこり」という言葉を使うからだ。 
でも、世の中では意外とこの言葉を使う人は少なくて、
そんな中で彼が、私が好きだと思った絵に対して
「ほっこり」と感想を述べてきたものだから、
もう、彼に興味がわいて仕方がなくなり、
しばらく、彼とメールをしてみることにした。
顔も、名前も、歳も知らない人と。