緊急召集

  
  夜、例によって残業をしていたら緊急召集がかかった。
隣の課の課長が
「青山で部長が飲んでるから、
 会社に残ってる奴は今から来るように、だって。」
と、言った。
「吉田さん、ごめんね。」
と言いながら、自分も行きたくなさそうな顔をしている課長に連れられ、
部長の酒盛りに合流。
私も一応女だからということで、部長の隣の席に座らされる。
「吉田さん、こういう時は食べなきゃだめなんだぞ。」
と部長に言われ、
食べたくもないのに
これでもか、これでもか、というほど食べることになり、
「美味しいです。
 もう一切れいいですか。」
なんて言いながらさも美味しそうに食べ、
お酒も飲んだ。


  気を使ってぺこぺこしながらお酒を呑んだってちっとも美味しくない。
無駄にカロリーを摂取して、
体内のアルコール濃度ばかり高まって、
全く悔しいばかりである。


  帰ってきたら無性にコーヒープレスでいれた珈琲が飲みたくなって、
何ヶ月ぶりかでコーヒープレスを使った。
何だかとても美味しくて、心がほっこりした。
やさぐれた心も癒されて、幸せな気持ちになった。


  仕事はと言うと、
今月から私は問屋さんを担当するようになり、
前に比べて仕事の量が増えた。
自分が担当する問屋さんの先のレストランにもまわるようになった。
担当するお店が30軒くらい増えた。
今月の目標はそのお店をまわり、私の名前と顔を覚えてもらうことだ。


  まず一軒目は国立に行った。
あぁ一橋大学のある街だな、なんて思いながら古本屋に入った。
状態のいいイタリア語の辞典が売っていたのだけど、
3000円だったので買わなかった。
この仕事をしていて、
やっぱりイタリア語の辞書を持っていた方がいいなと何度か思ったのだけど、
半年経っても未だ買わずにいる。


  電車に揺られること30分、
今度は原宿で電車を降りて、表参道のお店を数軒まわった。
今日は、それでおしまい。


  表参道のお洒落なビルの中でエスカレーターに乗りながら
ガラスに写った自分の顔を見て、何か変だと思った。
何が変なんだろうと思ってよくよく自分の顔を見てみると、
眉毛を書き忘れていた。
午後5時近くのことだった。