真面目だった私と、今の私


  今日は朝からイタリアのマルケ州の食品やワインの展示会だった。
都内某所に様々な会社が集まり、自社商品を展示する。
様々なレストランの方が来たり、業界の重鎮と言われるような大物が登場したり、
業界内ではまぁまぁ注目されている、毎年恒例のイベントのようだ。
特集する州も年によってちがって、
今年はマルケ州だったが、去年はトスカーナ州のようだった。


  私の会社は、ワインの他に、
マルケ州のメーカーの卵のパスタを出して、試食も行った。
卵と小麦粉が材料で、水はいっさい使わずに作ったパスタで、
ぷりぷり独特な食感と卵の風味が特徴だ。
私は実は今日初めてそのパスタを食べて、意外と美味しくてびっくりした。


  そろそろ会も終わりに近づいてきた頃、ヒマな時間を見つけて、
展示してある赤ワインを飲みながら卵のパスタを食べたら美味しくて、
ついつい  くつろいでしまった。
新人のクセして、図々しいと自分で思った。


  新人には新人の、あるべき態度というものがある。
そして、営業マンには営業マンの、あるべき態度というものがある。
私は新人の営業マンだから、
その二つを掛け合わせて、新人の営業マンとしてのあるべき態度を演じなくてはいけない。
そのことは重々承知しているのだけど、
私の態度は、なってない。自分でもわかる。
もっと意識しなきゃだめだな、といつも反省する。
でも、許されるのであれば、許される限り甘えていたい。


  昔々、私は、それはもう真面目な子供だった。
吉田さんは勤勉だ、などと言われたことさえあった。
忘れ物はもちろんしないし、
授業態度も真面目、
学級委員にもなった。
  いつからか、そんな自分が嫌いになった。
真面目な人間だと思われることが、嫌になってしまった。
そして私は、今の私になった。
きっと昔の私だったら、
新人のクセして展示会の途中にワインを飲みながらパスタを食べてくつろぐなんてこと、
絶対にしなかった。


  私は、今の自分がとてもラクで、
あぁ自分はきっと、もともと真面目な人間だったのではなくて、
真面目になろうとしているだけだったのだろうなと思った。
なぜ真面目になりたかったのかなんて、わからない。
母が真面目な人間だったから、それに合わせようとしていたのかもしれない。