失敗

  仕事で失敗をした。
もう一週間近く、処理をしていた。
電話をするたび、その店の店長に怒られた。
先輩に相談しながら、フォローし続けてきたのだけど、だめだった。
今日は到頭
「僕は仕事をする気のない営業マンと仕事をする気はない。」
と言われた。
最初は私の会社に対する文句を言われていたのだが、
到頭  私個人に対してのお叱りを受けたので、私は先輩に言った。
「もっと粘って解決できるなら、がんばります。
 でも、もしかしたら、私はもう担当を外れた方がいいかもしれません。」
生意気なのは承知で、そう言った。
そして私は、担当を外れることになった。


  悔やまれるのは、自分で解決できないまま離れてしまったことだ。
しかし、謝っても謝っても怒られたし、
どんな対策を練っても火に油を注いだだけだったし、
結局もう、私は、嫌われてしまったのだ。
話は少しも聴いてもらえなかったし、
私のすること全てが気に入らないようだった。
よくドラマなんかではここで営業マンがもう一踏ん張りして信用回復するところだけど、
先輩でさえ、
「もうこれは、1回離れた方がいい。」
と言った。


  最初から、私のことなんて信用してくれていなかった。
私が、新人だからだ。
新人で、ワインの知識もままならなかったからだ。
実は最初からずっと、それを感じていた。
上辺では良好な関係を築いているように見えていたのは、
私が彼のメニュー作りのためにワインの一覧を用意したり、
サンプルのワインを持って行ったり、
ある程度彼にとって得な話を持って行ったからだ。
その程度の脆弱な関係だということは、わかっていた。
それでも努力はした。
彼と電話で話をするときは2オクターブくらい声を上げた。
なるべく笑うようにした。
精一杯、愛想良く振る舞った。
  

  良くないのは、私が、人間的に彼を好きではなかったことだ。
一番好きではないタイプの人間だった。
ちゃらちゃらした男だった。
ただ、ちゃらちゃらしているだけではない。
自分の中途半端な実力に変なプライドを持っていて、
お店の人たちを見下すようなタイプの人だった。
上辺だけの空虚な人間に見えた。
二度か三度、一時間近く商談してそう思った。
自分のそんな気持ちを出さないようにしていたつもりだったけれど、
でもやっぱり、こういう結果になった。
合わないものは合わない。
無意識のうちに、私はそう思って、
それがいい関係を築けなかった一番の理由なのだと思う。


  なんにせよ、私は、未熟なのだ。
  そして、何がきっかけでお客様が怒りだすかわからないと思ったら、
恐くなって踏み込めなくなった。
商談が、恐い。
いつどこで自分の態度や言葉がお客様のかんに触るかわからないと思ったら、
なんだか、恐くなって、面倒になった。