朝4時半


  私はその人が一体  何歳なのかは知らないが、
不器用な人なのだろうなぁと思っている。
その人と知り合ったのは一年くらい前だが、
「知り合った」という言葉を使うのはふさわしくないくらいの、
お互い顔は知っているという程度の間柄だった。
会うと言っても、事務手続きをするだけだったのだ。
それ以外にたまに一言二言  世間話をすることはあったが、
でもその程度だった。
その人は自分からは決して余計なことは話さないし、
私が話しかけても極めて控えめな返事が返ってくるだけだった。


  私はその人が本屋で働いているということと、
珈琲をいれるということと、
たまに何かを書いているということだけは知っている。


  数少ない記憶を辿ってみると、
多分その人は不器用な人なのだという気がする。


  多分その人は私より10歳以上歳上で、
多分真面目で、
多分常識のある人なのだろうと思う。


  今回初めて私は、その人に自分の携帯の番号を渡した。
その人がワインの勉強をしたいということだったので、
では私が社販で買ってお譲りします、なんていうのがきっかけだった。
そうして初めてその人からメールが来たのだけど、
メールが来たのが朝の4時半で、何とも意外な気がした。
朝の4時半に、真面目で、短くて簡潔なメールがきていた。
すぐ返信した方が良かろうと思い、私は、メールを見てすぐ、
朝の7時半に返信した。