上司の心遣い

  スーパーでかわいいヨーグルトを見つけた。
飲むヨーグルトやヨーグルト味のものが嫌いなので、
このスティックタイプのヨーグルトも買わなかったけど、
パッケージが気に入った。
私は、スプーン以外でヨーグルトを食べることが出来ない。
スプーンですくってヨーグルトを食べるのは好きだけど、
例えばヨーグルト味のアイスだとか、
ヨーグルトドリンクなどが、好きじゃない。


  スーパーで干物を買って家に帰ってそれを焼いて、
大根をおろして、おにぎりを握って、それを夕飯にした。
無性におにぎりが食べたくなったのだ。
私は、つくりたてのホカホカのおにぎりと一緒に
焼き魚を食べるのが好きだ。
おにぎりには程よく塩をかけて、海苔でまく。
それが、一番美味しい。


  今日の午前中は、馬喰横山町にある問屋さんに行き、
ワインの試飲会をした。
インポーターが数社集まり自社のワインの紹介をしながら、問屋さんに飲んでもらう。
30種類近いワインを、
テイスティンググラスに少しずつ注いで味見をする。
みんなで
「これは美味しい。」
とか、
「これはしゃばしゃばしてる。」
とか、
「この味でこの値段は高い。」
などと感想を言う。
私みたいな素人は、後半になってくると赤ワインはどれも同じ味に感じてきてしまう。


  今日もお昼はイタリアンで、
丸ビルのなかのHiro centroさんというお店に行った。
美味しいけど高いことで有名らしい。
予算は1500円と伝えて、あとはお店の人におまかせする。
トマトとモッツァレラチーズのカプレーゼを前菜に、
マッシュルームなどキノコのクリームパスタのオレンジピール添えと、
サルシッチャにドルチェ。
先輩と二人で行ったのだが、
お店の人がそれぞれに違うドルチェを選んでくださり、
先輩にはチョコレート味のイタリアの地方菓子を、
私にはローズ風味の冷たいドルチェを出してくださった。
液体窒素を使ったとのことで、
ドルチェが運ばれてきた時、
私のドルチェからは白いドライアイスのけむりのようなものが流れていて、
白いシャーベットのような物を少し口に含むと、
まるでバラのポプリを食べているかのように口の中に香りが広がった。


  サンプルで使うワインや、バラで個別に納品するワインなどが
毎日本社に届くので、
それを先輩の机まで運んでいくのも、新人の仕事の一つだ。
新人は私しかいないので、仕方なく一人でする。
5キロのトマトを運ぶこともあれば、
ワインが9本入った段ボールを運ぶこともある。
辛いのだけど、これをするおかげで商品を覚えることが出来る。


  今日も一人でちまちまワインを運んでいたら、
「大丈夫か、ちびっ子。」
と、課長に話しかけられた。
「毎日ランチ、辛いだろ。
 お金なくなったら、言っていいんだよ。
 お昼ご飯でお給料なくなっちゃったら、意味ないからね。
 俺と同行のときは、なか卯でおごってあげるから。」
と、笑いながら言ってくれた。
心の中で
「そうなんですよー。
 エンゲル係数が跳ね上がっちゃって。」
と思ってはいたのだけど、そうは言えず、
「ありがとうございます。」
と答えた。
一日平均1500円と考えて、週5日で…と考えていくと、
本当にお金が大変なことになってしまう。
なか卯、なんてマニアックなお店を出してきた所が、いい。
この人が上司で本当に良かったと、今日もまた思った。