歓迎会

  霞ヶ関のカジュアルなイタリアンのお店で、歓迎会をしてくださった。


  今までウコンを飲んで飲み会に臨んだことなど一度もなかったのに、
何だか弱気になってしまって、
今日同行した先輩と一緒に歓迎会前にウコンを飲んで備えた。
27歳のこの女性の先輩は中途採用でこの会社に入られたので、
何かにつけてこの会社の教育制度がなっていないことを気にして、
私に色々なことを教えてくださる。
私もそれに甘えて、色々と質問をする。
歓迎会ではどう振る舞えばいいですか、などと聞いてしまう。
「今日は吉田さんが主役だから、部長の前に座ってにこにこしてれば大丈夫だよ。」
と、優しく教えてくださる。


  20人以上が集まった。
20人中女性は私を含めて5人で、
同じ部署の中でも普段女性のいないチームで働いてる先輩などは
「普段女性と接してないから、近くに来てほしい。」
などと冗談を言っていた。
私の前には部長が座り、隣に課長が座っていた。
緊張してしまって、食べ物の味はほとんど覚えていない。
私の至らない部分を、課長がすべてフォローしてくださった。
私の部署には課が三つあって、課長も三人いる。
私は、自分の課の課長が一番優しそうで、親しみやすい方だと思っていて、
上司がこの方で本当に良かったと常日頃思っている。
今日も改めてそのことを実感した。


  飲み会の後の二次会は欠席者が多いため中止になり、
三々五々散って行った。
「吉田君はアメリに似てるなぁ。」
顔は生島ヒロシ、声は哀川翔によく似た部長が、
タクシーに乗る間際そんなことを言った。
「部長、嬉しいですがきっと前髪だけです。」
と、思わず言ってしまった。
先日  高田さんが「吉田さんは前髪短めのがいい」と言って、
思い切り眉毛の上で切ってしまったばかりだった。


  私の課の課長は、部長とともにタクシーで帰って行った。
時間は10時半くらいだった。
「吉田さん、今日何時まで大丈夫なの?」
と、隣の課の課長に尋ねられ、
「何時まででも大丈夫です。」
と咄嗟に答える。
「いやぁ、吉田さん、たいしたもんだよ。」
と課長はご機嫌になり、二件目に誘っていただく。
6人位で、ビールを飲みに行った。


  私の電話対応の様子などを課長がほめてくださった。
実は今朝、ある男性社員から電話の声が暗いと注意を受けたばかりで落ち込んでいたのだ。
ある女性の先輩が
「言い回しとかが落ち着きすぎてて、
 今までどんな人生を送って来たんだろうってちょっと思っちゃったよ。」
と、酔った勢いでおっしゃっていた。
宴もたけなわになり、課長が少しずつシビアな話をし始める。
中間管理職の悩める心を吐露し始めた頃、
「吉田さん、もう帰ろうか。」
と、ある男性社員が声をかけてくださった。
私も内心、いきなり私がこの場に居合わせてしまっていいんだろうか、
聞いてはまずいのではないだろうかと思っていたところだった。
「いやいや、いいんだよ。
 今日は吉田さんの日なんだから。
 吉田さん、今日はタクシーで帰ろう。」
と、課長に止められ、再び席に戻る。


  結局、12時すぎにタクシーで帰った。
「吉田さん、ちゃんと領収書をもらうんだよ。
 忘れずにね。
 取り合えずお金を渡しておくから、明日返して。」
と、途中まで一緒にタクシーに乗った先輩から2万円を貸していただく。

  
  日付がかわり、岸野さんの誕生日になっていた。
タクシーの中からメールを送った。