御社にとっても悪い話じゃないと思うんです


  なんか、今日はもう、いいや。

  
  そんなことを思って、3時半くらいまで仕事をさぼっていた。
午前中は、先輩から頼まれた仕事をするために11時半くらいまで会社にいた。
軽くお昼ご飯を食べてから、
渋谷のマクドナルドでぼんやりしていた。
仕事に必要な資料の準備をして、少し値段などを調べたりもした。


  隣の席に座っていた女の子二人が、念入りに化粧をしていた。
これから、何かのイベントだったらしい。
服装やメイクから想像するに、ビジュアル系ロックバンドか何かのイベントだろう。
私がお店に入ったばかりの時には鏡餅のような顔だった女の子が、
みるみるうちに目鼻立ちのくっきりした顔に仕上がっていった。
今日は下瞼にもアイラインをひくか、どうか、なんてことで悩んでいた。


  私はアイラインをひかないものだから、
電車の中などでアイラインをひいている女性を見ると、
興味津々で眺めてしまう。
アイラインてどういう風にひくのかな、なんて思うのだ。
最近になってやっと、私も睫毛の間を埋めるようにアイラインをひくようになったが、
でも、瞼の上に線をひくようなアイラインはひいたことがない。
いつか高田さんが
「吉田さんの目は無理してアイラインひかなくていいよ。」
と、言ったからだ。
私の目はどうやら、アイラインがひきにくい目らしい。


  18時に表参道のお店で商談。
「御社にとっても悪い話じゃないと思うんです。」
と、ドラマでしか聴いたことがなかったようなセリフを、
今日、初めて言われた。
あぁ、私、本当に商談してるんだなと思った。